人は確率をそのまま想像する?52人の実験が見た意外な偏り
くじを引くとき、「当たりは1%」と数字でわかっていても、頭の中に当たりの場面が何度も浮かぶと、実際より当たりやすく感じることがあります。人は選択の前に、起こりそうな結果を心の中で思い浮かべています。その思い浮かべ方に偏りがあると、選択も変わるのでしょうか。
研究者が調べたこと
2026年5月、Jake Spicerさんらは、金銭が関わる賭けの選択を使った2つの実験を報告しました。参加者は、選択肢の結果を何度も思い浮かべ、そのあとでどちらを選ぶか答えました。実験1は52人、実験2は51人のオンライン参加者です。実験1の年齢は20〜79歳、平均38歳でした。
ここでいう「心のサンプリング」は、結果がまだわからないとき、過去の経験や想像から例をいくつか思い浮かべることです。たとえば旅行先を決めるとき、楽しそうな景色や以前の失敗を思い出して比べることが、その身近な例です。
意外で面白い発見
参加者が思い浮かべた結果を数えると、実際の確率が低い珍しい結果は、確率の数字から予測されるより多く現れました。反対に、よく起こる結果は少なめに思い浮かべられました。同じ結果を続けて思い浮かべることも避ける傾向がありました。
実験2では、結果を思い浮かべた後に、よりリスクの高い選択肢を選ぶ傾向が見られました。ただし、結果を意識して思い浮かべる作業そのものが選択を変えた可能性があります。ふだん自然に考えるときも同じことが起きるかは、まだわかっていません。
この研究は、人の頭が確率表をそのまま再生するとは限らず、思い浮かべた例が判断に関わる可能性を示しました。
生活や仕事で参考にできること
大きな買い物、旅行、仕事の選択などで迷ったら、「思い浮かんだ例」と「実際に起こる頻度」を分けてみる方法があります。たとえば、良い結果・よくある結果・困った結果を一つずつ書き、数字がわかるものは公的な情報や信頼できる記録で確認します。
この確認方法自体を今回の実験が効果検証したわけではありません。研究の発見を日常の判断に活かすための、試しやすい工夫として提案しています。
まだわからないこと
実験の人数は各回およそ50人で、課題は金銭賭けを使ったオンライン実験です。研究は事前登録されておらず、参加者が意識して結果を生成する手順が、自然な判断と同じかも不明です。医療、投資、人生の大きな選択で同じ偏りが起きるかを示す研究ではありません。より大きな標本や、日常の選択を追う研究で確かめる必要があります。
論文情報
- 英語タイトル:Generated outcomes in risky choice reveal biased sampling and sequential dependencies
- 日本語タイトル:リスク選択で生成される結果は、偏ったサンプリングと系列依存を示す
- 著者:Jake Spicer, Yun-Xiao Li, Lucas Castillo, Johanna K. Falbén, C. Stella Qian, Adam N. Sanborn
- 発表日:2026年5月7日
- 掲載誌:*Communications Psychology* 4, Article 104(査読済み)
- DOI:10.1038/s44271-026-00467-y
- 原著論文:出版社の全文ページ
- 確認範囲:原著全文を確認。人を対象とした2つの実験研究。実験課題内の操作と選択を調べた研究で、日常生活での因果関係は確認していません。
数字を知ることに加えて、自分がどんな例を思い浮かべているかを見直すと、選択の理由が少し見えやすくなります。